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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)724号 判決 1963年9月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山田盛の上告理由について。

所論は、原判決は弁済供託に関する法令の解釈適用を誤まると主張するけれども、被上告人が本件供託金一一万二〇〇〇円を、上告人に対する本件公正証書表示の二四四万七二〇〇円の商品残代金及びこれに対する昭和二九年一一月四日より完済に至るまで年一割二分の割合による遅延損害金のうち、右損害金の一部に充当する旨の通知を特に上告人に対してなし、且つ、その供託所である東京法務局に右通知書を添附して右供託金還付申請をなし、予め右留保の意思表示を明らかにして右還付を受けた事実が確定された本件において、原判決が右供託金は右遅延損害金の一部弁済に充当されるけれども、その余の右債務消滅の効果を生ずるものではないと判断したことは正当であり、当裁判所の判例(昭和三五年(オ)第七〇号同三六年七月二〇日第一小法廷判決、裁集民事五三号二〇三頁参照)とするところである。なお、所論引用の判例の趣旨も右に反するものではなく、所論を維持する判例として適切なものではないから、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤朔郎)

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